十五年目にして訪れた「新たなバブル」の予兆

執筆者:小田博利2005年11月号

株価と不動産が上昇し、マネーゲームが過熱する……日本経済は久しぶりの“躁状態”だ。バブルの歴史は繰り返すのか? 祭りの後。そんな感じを抱かせるわが宰相である。勝ち過ぎてしまい、次は負けしかない。あるいは、もう抵抗勢力は作り出せない。こんな憂い顔のサムライをよそに、日本の課題は募ってゆく。 吉崎達彦『1985年』(新潮新書)は、今日から八〇年代半ばを振り返った最高の『オンリー・イエスタデイ』であり『シンス・イエスタディ』(いずれもフレデリック・ルイス・アレン著、邦訳は筑摩書房)である。八五年の物語には胸が締め付けられる思いがする。今繰り返しているドラマが八五年から九〇年までの「日本が最も幸せだった時期」だからではないか。 小泉純一郎首相は不思議に中曽根康弘首相と重なり合う。財政再建という政策課題、小さな政府、そして民間の強調。「民にできることは民に」という標語は、「民活」と称された「民間活力の導入」路線の再来である。目刺しを食べて倹約路線を訴えた土光臨調と、政財官界に株をばら撒いたリクルートの江副商法は同時代の出来事だった。 そして今また、「米百俵」の精神主義を好む小泉首相の下で、ホリエモンのニッポン放送買収劇や村上ファンドによる阪神電気鉄道買収劇が進行している。『週刊朝日』が「『村上ファンド』銘柄で儲ける方法」を大特集したことは、バブル時代を冷笑的にとらえていたメディアが変わったことを象徴する。

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