「05年体制」の始まり

執筆者:名越健郎2005年11月号

 小泉の清きに亀も棲みかねて   元の濁りの田中恋しき こんな狂歌がネット上に登場したが、与党が改憲発議も可能な3分の2を超す議席を確保して圧勝した9.11衆院選は、自民、社会両党による「55年体制」に代わる「05年体制」の始まりとなるかもしれない。「自民党は都市部で弱い」「高投票率は自民党に不利」「議員は地域の代表」といった選挙のたびに語られてきた常識が覆され、公示直前に立候補した「刺客」が票を伸ばした。特定郵便局、建設業者、農家などが下支えした自民党は無党派層にウイングを広げた。「ユーセイ」は外国の新聞の見出しにもなり、ロシアの新聞は「小泉首相が独裁に」と書いた。55年体制から50年を経て、日本の政治が激変した。 小泉純一郎首相が新人議員に話しかけた。「君は郵政法案を読んだか」「2度読みました。ようやく内容がつかめました」「そうか、わたしも読まなければ」 政党と選挙区をころころ変える刺客の代表格・小池百合子環境相が遊説に出かけると、雨が降り出した。 スタッフが傘を差し出すと、小池環境相が言った。「必要ないわ。水滴の間を濡れずに歩いていけるから」 有権者がメディアのインタビューを受けた。

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