強面の宣教師「村上世彰」次は映画界を狙うか

執筆者:鷲尾香一2005年12月号

村上ファンドに出資したい連中が引きもきらないという。阪神株取得ではいささか違う顔を見せたこのご仁、次は映画産業かと囁かれ――。「楽しみにしていてください。さすがは村上だと言われるような、素晴らしいものを出してみせますよ」 阪神電鉄の株式に約一千億円を投じ、三九・七七%を取得して筆頭株主となったMACアセットマネジメント(通称・村上ファンド)。ファンドを率いる村上世彰(四六)はそう言い放ち、胸を張ってみせた。 その内容で目をひくのは、取得株数と投資資金だ。これまで村上ファンドが手がけてきた案件と比べて、株数と投資額の大きさは際立っている。それだけに、「阪神株の出口戦略(収拾のつけ方。株式を売却して利益を得るなど)は大丈夫なのか」と勘繰る声も多く聞かれる。 しかし、村上は「額の大きい方がやりやすい」と豪語する。村上がそれだけ自信をみせる出口戦略とは、一体どんなものなのか。何もかもが「異例尽くめ」「阪神電鉄の資産は売却しない。あくまでもバリューアップさせることを考えている。基本的な戦略は、不動産と流通の活用だ」 村上の狙いは阪神電鉄が所有する土地の含み資産だ。これまで村上ファンドは投資対象として、潤沢な現預金や現金化しやすい有価証券などを保有する企業に狙いを定めてきたが、ここ一―二年は対象企業の保有不動産に目を向けている。この方針変更は村上自身も「不動産の下落は谷が深すぎた。これがやっと戻り始めている。今や土地は金だと考えている」と認める通りだ。阪神電鉄の場合で言えば、甲子園球場の敷地の簿価は八百万円だが、時価評価は約百七十億円。また、阪神百貨店の敷地についても九百万円の簿価に対し三百七十億円以上の時価評価がつく。主な不動産資産だけでも、簿価約百四十六億円に対して、実勢価格で約千八百億円という巨額の含み資産を抱えている。

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