政治は家内制伝統産業

執筆者:2005年12月号

 よくも悪しくも政治は大きく変化しているように見える。少なくとも政治の風景は相当に変わってきている。その中で、まったく変わらない、それどころかますますひどい状況になっていることがある。世襲議員の跋扈である。 第三次小泉改造内閣の顔ぶれを見るがいい。世襲は小泉純一郎首相(祖父、父に続く三代目)、麻生太郎外相(曾祖父、母方の祖父・吉田茂元首相、父に続く四代目)、谷垣禎一財務相(二代目)、小坂憲次文科相(四代目)、川崎二郎厚労相(三代目)、中川昭一農水相(二代目)、安倍晋三官房長官(三代目)の七人。 歌人与謝野鉄幹・晶子夫妻の孫である与謝野馨経済財政・金融担当相、父親が著名な大阪市長だった中馬弘毅規制改革・行革担当相も、世襲政治家ではないがファミリーネームにかなり支えられていることは確かだ。 世襲政治家がすべて悪いというような棒を飲む議論はしたくはないが、それも程度の問題で、ポスト小泉を争うといわれる四人、すなわち安倍晋三、麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫の四人すべてが世襲政治家というのも日本が近代国家かどうか疑われても致し方のないような事実である。 この傾向はこれからさらに強まって行くだろう。自民党も民主党も候補者公募制を採用して政治家への道を広げているように見えるが、それもこれも現職議員がいない選挙区での話にすぎない。一人しか当選できない小選挙区制の下では、政治家という職業が限りなく「家内制伝統産業」に近づいているのだ。そればかりか、親子、兄弟、夫婦で同じ時期に国会議員をつとめるというケースがこれからも増えて行くだろう。

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