9月のドイツ総選挙から3カ月にしてようやく第3次メルケル政権が発足した。この中道右派・キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派・社会民主党(SPD)の大連立内閣をめぐっては、国防相に初の女性としてウルズラ・フォンデアライエン前労働社会相が就任するなどの人事がメディアの話題をさらっているが、ドイツのアジア外交に変化が生じつつあることはまるで伝えられていない。1990年代から中国市場への進出に躍起になり、ほとんど中国との関係強化一辺倒だったドイツがここに来て対日重視路線に舵を切る兆しを見せているのだ。久しく絶えていた日独首脳間の交流に向けた調整も始動するとみられ、日独接近の流れは中国を牽制するカードにもなり得る。

 

「ドイツ外交の重要な柱」

 第3次メルケル政権の向こう4年間の政策理念表明ともいうべき連立協定に法的拘束力はないが、それでもアジア政策の項目で真っ先に日本の名を挙げ、「日本との友好関係はドイツ外交の重要な支柱である」と宣言したことはさすがに目を引いた。その上で、「日本と欧州連合(EU)の自由貿易協定締結に向けた継続中の交渉を歓迎する」と述べ、日・EUの経済連携協定(EPA)締結に強い意欲を見せた。

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