「思想は必ず実を結ぶ(Ideas have consequences.)」 ネオコンの牙城といわれるワシントンの保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)で安倍晋三・自民党幹事長(当時、現官房長官)が英語で講演し、このフレーズを口にするのを聞いたとき、「誰が入れ知恵したのかな」と、思わず苦笑してしまった。 アメリカの保守政治活動家らが最も好んで使うフレーズだからだ。二〇〇四年春のことである。 この句があまりに安易に保守派政治活動にかかわる若者らに使われるので、ブッシュ大統領の選挙参謀カール・ローブらを育て上げた、古参の保守政治活動家モートン・ブラックウェル(一九三六―)は「思想は行動を起こさなければ実を結ばない」をあえてモットーにしている。 一般に使われる元のフレーズもブラックウェルの改訂版も、人が生みだす思想がやがて現実を大きく変えていくことを、積極的かつ肯定的な意味でとらえている。政治活動の根底にしっかりとした思想を据えることが重要だと訴えている。 この句とその出典が日本で一部に知られるようになったのはごく最近のことだ。アメリカ人でも、戦後保守思想に傾倒している人でなければ、出典は覚束ないだろう。

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