口惜しさをにじませた者あれば、胸高まり紅潮した者も――。小泉人事を分析すれば、今後の生き残り競争の形も見え始める。「昨年の人事は『郵政民営化実現内閣』としたが、今回は『改革続行内閣』だ。新鮮さ、実力、重厚さという全体のバランスを考えた」 十月三十一日、首相官邸。午後九時三十分から始まった小泉純一郎首相(六三)の記者会見で最も緊張していたのは、安倍晋三官房長官(五一=森派)だった。人目をひくほど紅潮した顔、真一文字に結んだままの口元には気負いがみてとれる。隣で会見する小泉首相の姿に、来年九月の自分を重ね合わせていたのかもしれない。 世間では“ポスト小泉候補”として、入閣した麻生太郎外相(六五=河野グループ)や、谷垣禎一財務相(六〇=谷垣派)の名前も囃すが、安倍氏自身が彼らをライバル視する言動はまったく伝わってこない。安倍氏がもっとも注意を払ってきたのは福田康夫氏(六九=森派)だ。しかし、福田氏の名前が閣僚名簿に載ることはなかった。もはや小泉首相が突如体調を崩してなどのリリーフ登板以外、福田氏の目はない――安倍氏の胸中にはそうした安堵の思いもあったに違いない。 この日発足した第三次小泉改造内閣は、「後継候補の絞り込み」や郵政民営化法案に関する「論功行賞」といった性格をくっきり打ち出す一方で、「小泉人事の巧妙さ」を改めてみせつけた。それを象徴していたのが安倍氏の官房長官登用である。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。