灯籠流しがつなぐもの
2014年2月7日
利用者さんのひとことから
少し前のことになる。昨年の6月のある日のこと。入浴の介助をしているときに、昭和2年生まれの佐藤トヨさん(仮名)が、こんなことをつぶやいた。
こうやってさ、ここでお風呂に入れてもらったり、楽しくやらせてもらったりしてさ、本当にありがたいと思うよ。わたしゃ、こういうところをさ、おかあさん(長男の嫁)にも見てもらいたいだよ。ずっと前からそう思ってた。そうしたら、おかあさんも「ありがたいね。よかったね」って言ってくれると思うんだよね。……どうしたら、おかあさん、すまいるほーむに見に来てくれるかな。学校の参観日みたいなのがあったら来てくれるかな。参観日があったら、みんなうんと喜ぶよ、きっと。
トヨさんは関節リュウマチの悪化や腰椎の圧迫骨折などが重なり、介助がなければ歩くことも困難であるし、足や腕の関節にいつも痛みを抱えている利用者さんである。でも、私たちがお手伝いをするたびに、すぐに「あ~りがとさん!」と明るい声でお礼の言葉をかけてくれる。トヨさんの「あ~りがとさん!」が響くたびに、すまいるほーむは穏やかな空気に包まれる、そんな方であった。
そのトヨさんも、同居しているお嫁さんのことになると口籠ってしまう。些細なことについても、「おかあさんに聞いてみないとわからない」と言うことが多く、とてもお嫁さんに気を遣っているようにみえる。また、みんなが爪にきれいな色のマニュキュアを塗っているのを遠目に見ていたトヨさんに、「塗ってみますか」と声をかけると、「おかあさんに笑われちゃうからいいよ」と遠慮されることもあった。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。