極北の独裁国

執筆者:徳岡孝夫2014年1月9日

 気に入らないヤツは、親戚であろうと誰であろうと、ぶっ殺す。恐怖で足腰が立たなくなっている「叔父さん」を、会議の席から兵士2人で引っ立て、コンクリート製の箱のような刑場に放り込み、人定質問も審理や判決文朗読もあらばこそ、妻の人間らしい「あなた」のひと声さえかけず、(おそらく)機関銃で蜂の巣にしたのだろう。

 そういう死刑執行人と、われわれは、一衣帯水の距離に住んでいる。よく安眠できるよ。よくまあ、のんびり新年の挨拶を交わしたりするよ。

 

 20世紀最大の殺し屋の1人に挙げられるスターリンは、あるときソ連軍将官の昇進予定者リストを部下から渡された。どうせジューコフ元帥かその子分が作ったリストだから、スターリンには異存がない。リストのページを繰る前に、彼は「OK」のシルシに、ぺージの隅にチェックを付けた。すると、そのページに列挙されていたソ連軍将官は、全員が昇進どころか銃殺になったという。

 

 われわれは、スターリンと似た、またはそれ以上の「極北の独裁者」と同じ世代に生きている。

 独裁者にも死ぬ日は来る。1953年、スターリンが死の床に横たわっていたときの模様を、彼の娘スベトラーナが書いたのを読んだ記憶がある。

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