粗鋼生産量世界一の鉄鋼メーカー、ミッタル・スチールに経営不安説が囁かれ出した。 同社は一九七六年創業と、鉄鋼会社としては“若い”企業。M&A(合併・買収)を重ねて成長し、二〇〇五年四月、米大手ISGの買収で、アルセロール(本社ルクセンブルク)を抜いて世界トップに躍り出た。 現在は十四カ国の鉄鋼十九社を傘下に持ち、本社はオランダにあるが、元来はインド企業。創業者のラクシュミ・ミッタルは「フォーブス」長者番付の最新版では、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットの両氏に次ぐ三位につけている。 そのミッタル・スチールに暗雲を投げかけているのは、中国だ。経済成長を続ける中国が輸入を急増させたことで、ここ数年、鉄鋼や原油をはじめとする工業資源・原料の価格高騰が続いてきた。 だが、鉄鋼に関しては中国が生産量も増やしており、輸入国から輸出国へと転換しつつある。その結果、最近になって鉄鋼相場は国際的に下落に転じている。ミッタルの主要市場であるインドでも、七、八月に鉄鋼各社が値下げに踏み切った。 ミッタルにとっての問題は、大半の企業買収を借入金によって行なっていること。返済計画は鉄鋼価格の上昇あるいは高止まりを前提としているとみられ、鉄鋼市況の低迷で売上、そして利益が減れば、返済困難に陥る可能性があるという。

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