画期的な論文をまとめた野澤氏(筆者撮影)
画期的な論文をまとめた野澤氏(筆者撮影)

 昨年12月、東京・恵比寿の日仏会館で「ワインをめぐる人と風景」とのタイトルでシンポジウムが開かれた。ワインがさまざまな文化の交流と対話を仲介するツールとなっていることを考察したシンポジウムだが、この中で日仏会館フランス事務所の協力研究員、野澤丈二氏が「江戸期における欧州産ワインの普及」という興味深い報告を行った。

 報告は次のような内容だった。

 

 1、江戸時代、オランダの東インド会社の貿易船は毎年、長崎・出島のオランダ商館にワインを運んできたが、その量は伸び続け、17世紀末には年間3000-4000リットルになっていた。

 2、日本に運ばれたワインの7、8割がスペインのワイン。残りがフランス、ポルトガル、ケープ(現在の南アフリカ)など。欧州から日本に着くまで1年がかりで、2度赤道を越える。スペイン産ワインが選ばれたのは当時のオランダ・スペイン関係と共に、スペインワインが旅に強かったことがある。

 3、初めのころ、ワインは商館に滞在するオランダ人の個人消費用だったが、次第に日本人の間に普及していく。まず日本人の役人を接待するのに使われ、続いて将軍をはじめとする高位役職者への贈り物に利用され、ついには日本人相手に販売もされるようになった。

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