七つの海をまたにかけ世界の島を売る男

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2006年1月号

売ったその数、千五百有余。世界一のプライベートアイランド・ブローカーのリストには、日本の島も載っている。[ローマ発]ドイツの文豪ゲーテは、若き弟子たちにこう説いた――若い頃の夢がおとなになって叶うこともある、心してかかれ、と。 ファーハッド・ブラディの人生は、まさにその言葉どおりになった。少年の頃、ロビンソン・クルーソーの冒険に心を奪われたブラディは、ダニエル・デフォーの名作を繰り返し読むうち、いつしか無人島での暮らしを夢見るようになった。私の取材に答えて、ブラディはこう語る。「でも、黒人従僕と二人だったクルーソーと違い、私は島で独りで暮らしたいと思っていた」 島を手に入れた今、予定は変更となり、島での暮らしは妻と二人の子どもたち、それに二千頭の羊と分かち合うことになった。 自分だけの島を手に入れるため、彼が収入源としたのが、他の島々を売ることだった。この三十五年間で売った島の数は千五百を超える。今や、プライベートアイランドの売買にかけては世界に並ぶ者がいない。 ブラディの人生に誰よりも驚かされたのは、裕福な実業家である父親だった。かつてロシアからドイツへ移り住み、ハンブルクに居を定めた彼は、その地で生まれた息子にも堅実な人生を望んだ。島暮らしの夢など忘れて、有名なドイツ銀行で社会経験を積むよう言い聞かせたのだ。

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