建築物「強度偽装」は新たな形の組織犯罪だ

執筆者:宮脇磊介2006年1月号

日本経済の“マフィア化”は、払拭されるどころか、強まっている。反社会的企業シンジケートによる悪質な詐欺は今後も起きるだろう。 コンサルタント会社・総合経済研究所の指南の下、住宅建設・販売業者の木村建設、ヒューザー、シノケンの三社と姉歯建築設計事務所が偽造し、民間検査会社イーホームズと日本ERIが見逃した構造計算書に基づいてマンションやホテルが建設・販売され、現在、世間を揺るがしている耐震強度偽装問題は、日本の闇社会(shady society)の一角に登場した新たな形の組織犯罪(organized crime)として捉えなければ、事の本質は見えてこない。 組織犯罪といっても昔ながらの暴力団とは違い、彼らが何々組といった看板を掲げているわけではない。しかし、「旧来からある暴力団のような反社会的勢力の力も利用しつつ、不公正な手段で莫大な利益をあげる反社会的行動」という意味では、建築物の強度を偽装し、人々の生命と財産を危険に晒すことなど全くお構いなしに、これを売りさばいて不当な利益を得ていた今回の建築詐欺はまさに組織犯罪という他ない。 問題となっている企業のひとつである木村建設のように、熊本に本社を置く建設会社が首都圏に進出するのは容易なことではない。長年、警察庁で組織犯罪対策に関わった筆者の経験からしても、暴力団と縁の浅からぬ建設業界の構造からすれば、熊本の暴力団と進出先を縄張りとする暴力団との間で何らかのやりとりがあったと考えても不自然ではない。彼らの商売には、こうした闇社会とのつながりが色濃くある。

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