北方領土の終わらない戦後

執筆者:名越健郎2006年1月号

 11月21日の日露首脳会談は、プーチン大統領が北方領土問題で一歩も譲らず、強硬姿勢が目立った。 その伏線は、5月の対独戦勝記念式典後の記者会見で垣間見えた。大統領は、バルト3国のラトビアがロシアの実効支配地域を「固有の領土」として要求したことに、「領土の代わりに死んだロバの耳をくれてやる」と罵った。 さらに「固有の領土というなら、クリミア(ウクライナ)やクライペダ(リトアニア)を返してくれ」と発言。ソ連解体で失ったロシアの「固有の領土」に言及し、「固有の領土論」が通用しないことを指摘した。ソ連のバルト3国併合批判には、3国を「大国間取引の小銭だ」と言い放った。 さすがに日本では「ロバの耳」発言はなかったが、戦勝60周年でロシアに奇怪なナショナリズムが高揚する現状では、領土返還は期待できない。 日露首脳会談で、小泉首相が4島の日本への帰属確認を迫った。 プーチン大統領は妥協案を示した。「仕方がない。4島が日本に帰属することを認めよう。本州、九州、北海道、四国は日本のものだ」 プーチン大統領が遂に、北方領土返還を決断した。すると、その翌日、クレムリンに各国首脳から電話がかかってきた。 メルケル独首相「大統領、カリーニングラードも頼みます」

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