年金改革の骨抜きを狙う官僚たちの詐術

執筆者:山田利三2006年2月号

この期に及んでも、霞が関の抵抗はやまない。公務員年金の「特権」を温存しようとあの手この手――。「(公務員共済年金の)追加費用は来年度から廃止できないか、というのが総理のお考えです。来年度予算に何らかの形で反映してもらいたい」 昨年十二月八日午前、自民党本部。政調会長室を訪れた丹羽雄哉・党社会保障制度調査会長に対して、中川秀直政調会長はそう伝えた。「追加費用」は、公務員の既得権益のひとつ。共済年金制度の発足前(国家公務員共済=国共済=は一九五九年、地方公務員共済=地共済=は六二年に発足)に役所に入った公務員には保険料を払っていなかった期間があり、そのままでは満額の年金を受け取れないため、政府は空白期間分の給付財源を追加費用として税金で穴埋めしてきた。いわば国庫による「裏負担」である。その総額は二〇〇四年度で一兆七千三百八十三億円にも及び、共済年金給付総額の三分の一にまで達している。 冒頭のやりとりがあった前日、自民党年金議員連盟(会長・加藤紘一元幹事長)は、「追加費用を〇六年度から全廃」との提言をまとめていた。その日のうちに中川氏から報告を受けた小泉首相は「その方向で検討しろ」と指示、冒頭の中川発言につながった。これには当の加藤氏でさえ「えっ、総理は本当にそう言ったの」と驚いたほどだ。

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