ブッシュ政権の広報戦略にテコ入れする黒衣

執筆者:渡部恒雄2006年2月号

ブッシュ政権の広報戦略立て直しの理論的支柱とされるピーター・フィーバー氏。支持率回復の背景に何があったのか。 イラクが大量破壊兵器を保有しているとの諜報情報は誤りだったことが明らかになり、米兵の死者数も二千人を超えた。こうした事態への説明責任を果たしていないとの批判に加えハリケーン被害への対応のまずさもあり、昨年後半、米ブッシュ政権の支持率は一時、危険水域の三〇%台まで落ち込んだ。 しかし最近の各世論調査では、政権支持率は軒並み四〇%台に回復している。ガソリン価格高騰に歯止めがかかったことも見逃せない。ただ、それ以上に注目すべきは大統領自身がイラク政策について誤りをある程度認め、同時に将来のイラク復興戦略を再提示して見せるという巧みな広報戦略へと舵を切ったことだ。 昨年十一月から十二月にかけて、ラムズフェルド国防長官、ライス国務長官ら政権主要メンバーたちは、イラク・中東をテーマにメディア攻勢を展開した。もちろん、ブッシュ大統領も十一月三十日のメリーランド州アナポリスの海軍兵学校での演説を皮切りに、主要テレビ局とのインタビューなどに登場した。 中でも効果的だったのが、イラク国民議会選挙の成功を受け行なわれた十二月十八日の大統領演説である(http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/12/20051218-2.html)。この演説の後、大統領の支持率は二―三ポイント上昇した。先述の通り支持率回復の背景には経済要素もあるとは言え、演説の内容はよく練られたもので評判が良かったのは間違いない。

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