昨年十一月、ロンドン金属取引所(LME)の銅取引で大量の空売りに失敗した中国人が行方をくらました。消えたトレーダーは、中国国家発展改革委員会直属の組織、国家備蓄物資調節センターの劉其兵だった。中国政府がこれによって被った損失は二億ドル以上に上ると見られている。 一昨年、中国のジェット燃料輸入を独占する国営中国航空油料集団のシンガポール子会社、中国航空油料が、石油デリバティブ(金融派生商品)で五億五千万ドルの損失を出したことも記憶に新しい。こうしたスキャンダルの続発で、中国投資家は世界的に、すっかり悪名高い存在になってしまった。 とはいえ、大豆や石油などの大消費国である中国は、国際商品先物市場で無視できない存在感がある。中国国内の商品先物市場の成長も目覚ましく、その売買規模はロンドン、ニューヨーク、シカゴなどの世界のトップ市場に肩を並べる勢いだ。この一月にも、中国最大の農産物先物市場である大連商品取引所(遼寧省)に大豆油先物が上場され、鄭州商品取引所(河南省)では白砂糖先物の売買が始まった。 こうした中でとりわけ注目を集めるのが、金融先物などデリバティブ解禁の動向だろう。中国政府は一九九三年に一度、上海証券取引所で国債先物の取引をスタートさせたことがある。だが、投機筋が跳梁跋扈、インサイダー取引も頻発し、わずか二年で中止の憂き目を見た。デリバティブ市場を再育成するには、まず、こうした苦い経験を克服しなければならないのだ。

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