安倍晋三首相は最近、周囲から「今年最大の難問と考えている政策テーマは何か」と問われたという。これに対する安倍首相の回答は、消費税増税でも集団的自衛権でもなければ、沖縄の普天間飛行場移設でもアベノミクスの成長戦略でもなかった。

 安倍首相が挙げたのはほかでもない、原発再稼働問題だった。

 2月9日に投開票された東京都知事選で原発再稼働容認派である舛添要一元厚生労働相が原発ゼロを唱えた細川護熙元首相らを破って当選した。これによって、安倍首相の原発再稼働路線に弾みがついたかに見えるが、実際にはそう簡単ではない。

 2月15、16両日に朝日新聞が実施した世論調査では、原発賛成派は34%にとどまったのに対して、反対派は48%にのぼった。また、産経新聞などが実施した2月22、23両日の世論調査でも52.9%が原発再稼働に反対し、「賛成」は39.3%だった。都知事選での細川氏敗北にもかかわらず、世論の原発に対する忌避感情は下火になっていないのだ。

 

衰えぬ「脱原発」

 細川氏は、「原発即時ゼロ」を掲げる小泉純一郎元首相の全面的な支援を得て選挙を戦った。だが、選挙期間中にマスコミ各社が実施した世論調査では、投票の際の判断基準として重視する政策で「原発政策」を挙げる人はごく少数にとどまった。この選挙では、原発反対派が負けたのではなく、そもそも原発問題自体が争点にならなかったのである。

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