タイのタクシン首相一族が通信大手シン・コーポレーションの持ち株を売却し、非課税で約七百三十三億バーツ(約二千二百億円)もの利益を得たことが発覚。国内で首相批判が高まっており、与党タイ愛国党出身の二閣僚も辞任して、一部地元メディアは「党内に深刻な亀裂」などと報道している。 だが、辞任した二閣僚は、下院(定数五百)で所属議員三百七十七人を抱える同党にあって、タクシン氏と元々距離を置く二十人の少数派閥ワンナムエン派のメンバー。タクシン首相は「政権基盤は微動だにしない」と言い放ち、側近のスラキアット副首相らに空席になったポストの兼務を命じた。 愛国党は十三の派閥からなるが、タクシン派(百四十人)と、首相の実妹、ヤワパー首相顧問の率いるワンブアバン派(三十人)が主導権を掌握している。 スリヤ副首相兼工業相らの属するワンナムヨン派(百二十五人)の動向が注目されたものの、スリヤ氏と首相の関係は強固。副首相一族が経営するタイ有数の自動車部品メーカー、サミットグループは、首相一族と携帯電話販売会社を共同経営しているほどで、スリヤ氏はいち早く「首相支持」を表明した。 飽き性といわれるタイ人の国民性も手伝って、今回の騒動は雲散霧消しそうな気配だ。

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