インドネシアの陸海空三軍を束ねる国軍司令官に二月十三日、ジョコ・スヤント空軍参謀長が就任した。空軍出身者の国軍司令官就任はインドネシア史上初めて。 司令官の人選は大統領が行ない、国会の承認を受けるが、これまで国軍司令官ポストは旧スハルト体制を支えた陸軍の出身者がほぼ独占していた。今回の人事は、国軍法が「国軍司令官は三軍から交代で」と改正されたことを受けたものとされているが、ユドヨノ大統領が異例の抜擢を断行した裏には、陸軍守旧派を排除して国軍の完全掌握を図りたいとの思惑がある。 この人事を最後まで妨害しようとしたのが、ユドヨノ大統領の政敵で、かつては民主化の旗手と崇められたメガワティ前大統領だ。二〇〇四年の大統領選挙で敗れたメガワティ氏は、退任直前にリヤミザード陸軍参謀長(当時)を国軍司令官に指名した。同参謀長はアチェ地方の独立紛争の武力解決を主張する強硬派。アチェ和平に前向きなユドヨノ氏の足を引っ張る嫌味な置き土産人事だった。 が、ユドヨノ氏は同年十月の大統領就任直後に司令官人事を凍結。アチェ独立派との和平の道筋が確定し、陸軍に遠慮する必要が減じた今年、今回の指名に踏み切った。 これがメガワティ氏にはおもしろいはずはなく、さまざまな抵抗を試みた。独立の父としていまだに陸軍内にシンパの多い故スカルノ大統領の長女だけに、陸軍の強硬派は同調する姿勢も見せた。

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