郵政民営化で持株会社となる日本郵政株式会社の社長に就任した西川善文氏が、早くも孤立感を深めている。就任会見で郵便貯金の預け入れ上限一千万円の撤廃や融資業務への早期参入を訴えて、業容拡大路線を明確に打ち出したからだ。 そもそも郵政民営化の目的は民業圧迫の是正。にもかかわらず、記者会見では「政府出資があるために政府の介入や制約を受けることは絶対に排除しなければならない」「(融資業務にも)できるだけ早く参入したい」と繰り返し強調した。 これにさっそく反論したのは郵政民営化委員会の委員長に内定した田中直毅氏。民業圧迫にならないか審議する監視機関の長として、「政府出資があるうちは業務展開に制限があって当然」と西川氏を批判した。 財界首脳も「日本郵政を円滑に縮小するのが本来の役目なのに、大きな勘違いをしている」と厳しい。西川氏の古巣、三井住友銀行首脳も「なぜ、あんなおかしなことを言うのか、真意がわからない」と周囲に漏らす。西川氏を社長に抜擢した竹中平蔵総務相までが「人事を間違えたかもしれない」と語ったと、ある関係者は明かした。 西川氏の日本郵政社長就任には日本経団連の奥田碩会長らが猛反対していた経緯がある。奥田氏は経団連副会長人事の際にも、候補だった西川氏の不良債権処理の手法や、米ゴールドマン・サックス証券との浅からぬ関係を懸念していた。今回堂々と打ち出された郵貯拡大戦略には、もはや呆れ顔だという。

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