「道州制」が実現すれば何が変わるのか

執筆者:近藤望2006年3月号

国の出先機関職員や地方議員が削減されるのは大歓迎。だが、早くも抵抗勢力が頑張り始めて……。「これは廃県置藩であり、廃県置州だ。道州政府をつくり、広域合併した大きな市で、県が今やっていることを全部できるようにする」 二月一日昼、自民党本部。党道州制推進議員連盟の総会で、武部勤幹事長はそう語気を強めた。 すべての都道府県を地域ごとの道州に再編する道州制のあり方について、首相の諮問機関である「第二十八次地方制度調査会(地制調)」(会長=諸井虔・太平洋セメント相談役)は、二月二十八日に小泉純一郎首相への答申を提出する予定だ。この答申で、道州制のおおまかな制度設計がはじめて姿をあらわす。 北海道の道州制特区構想が遅々として進まない中、なぜ、全国規模の道州制なのか。その背景には、市町村合併の進展がある。少子高齢化時代の本格化にそなえ、政府は自治体の財政基盤を強化するため「平成の大合併」を誘導。三千二百三十二あった市町村の数は、今年三月末には半分近く(千八百二十一)に減る。 合併が進めば、人口三十万人程度の「基礎自治体」と位置づけられる市が増える。それにともなって都道府県は権限を市へ大幅に移譲し、より広域的な事務に専念。道州に移行後は国の出先機関が担ってきた政策立案機能や財源を引き継ぐ。国の役割は外交、防衛、金融、司法など国家の存立に直接関わることや、全国的に同じルールで運用する必要がある事務事業に限定する――地制調がもくろむ基本方針が実現すれば、国が補助金を介して自治体に関与することは少なくなり、国、県、市町村の非効率な「三重行政」も解消できる。国の出先機関と都道府県の職員が大幅に減るという行革メリットも大きい。

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