ゑみ子さんの恋バナ

執筆者:六車由実2014年4月4日

「娘時代にさ、仲が良かった女友達がいただよ。その子がさ、ひとりじゃつまんないもんだから、私をよく遊びに誘ってきてさ。ゑみちゃん、今日どこそこ行くからさ、あんた仕事終わったら付き合いなってさ。それで私、熱海の洋品屋に勤めてたら。仕事終わってから喫茶店に行ったの」

「いい友達だね」

「うん、それで喫茶店に行くら。男の連中も来てるだよ、喫茶店に。そうすると私の友達がひっかけるの。『あんたっちこっちへ来ない? それじゃなかったら、私らがそっちへ行ってもいい?』ってさ。軟派だったんだよ、その女友達は」

「すごいね」

「さすが熱海はお街だね」

「それで、どうしたの?」

「それで、映画のナイトショーが夜の10時頃から始まるからさ、それまで喫茶店にその男連中といてさ。ナイトショーが始まる時間になるとさ、コーヒー代ぐらいは持っていたんだけど、しっかりした友達だったから、男衆に払わせるの。『私らお金ないから、あんたら払ってよ』って、こうだよ。男衆はしょうがないから払ってくれたんだよ。それで、私らは『ありがとう。じゃあね』って言って別れてさ、とっととナイトショーに行ったわけ。ははは」

「ひどいなあ。ははは」

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