ライブドア問題を語るブログの世界の奥深さ

執筆者:梅田望夫2006年3月号

 日本ネット産業の二〇〇六年は、一月二十三日のライブドアグループ・堀江貴文社長逮捕によって幕が開いた。堀江社長逮捕直後に、私は「ネット社会、時計の針戻すな」という文章を書き、一月二十五日の産経新聞に寄稿した(http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060124/p2に転載)。「ライブドアグループ固有の問題」と、ウェブ社会のこれからの進化や、新しい可能性を追求するネット企業群や、その全体を下支えする起業家主導型経済の意義は、明確に分離して議論されねばならないと強く感じたからだった。 さて彼の逮捕から一週間が経過した今この原稿を書いているのだが、その間で最も興味深かったのは、ライブドアや堀江貴文という人物を巡って繰り広げられるネット上のブログ言論空間が、日本でも実に多様で充実したものになりつつあるという発見であった。 匿名の筆者によって面白可笑しく過激なことが書き散らされている「2ch」(2ちゃんねる)的世界を想像される方も多いかもしれないが、ブログ言論空間の内実はかなり違う。玉石混交なのは確かだが、「石」をふるいよけて「玉」を見出す技術も進歩したため、ネット・リテラシーの高い人(ネットの扱い方に長けた人)ならば、ブログ言論空間から「玉」だけを選び出して読むことも、ずいぶん容易になった。

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