「機は熟した」――。 中国情報産業省は一月二十日、第三世代携帯電話(3G)の標準規格として、中国が独自に開発を進めてきたTD-SCDMAを認可すると発表した。中国電信科学院傘下の大唐電信と独シーメンスが中心となり、これまで一億八千万ドルを投じて開発を進めてきたTD-SCDMAに、ようやく「実用に耐える」とのお墨付きが与えられた格好だ。 すでに四億台近い携帯電話が普及している巨大市場・中国で、高速大容量のデータ通信を活用した様々なサービスが可能となる3G市場が立ち上がるタイミングを、これまで世界の通信関連企業は固唾を呑んで見守っていた。昨年末には情報産業省幹部などから積極発言が相次ぎ、「二〇〇六年解禁」も一気に現実味を増していた。 しかしその一方で不信感も根強かったのは、一九九〇年代末から開発が進められてきたTD-SCDMAは多くの技術的課題を抱えて商用化のメドが立たず、何度も「まもなく認可」の噂に振り回されてきたからだ。中国政府は欧州を中心に普及しているW-CDMAと北米中心のcdma2000も3Gの標準規格として採用する方針だが、まず独自規格のTD-SCDMA完成が最優先。それが実現しなければ、通信会社への3Gサービスの免許付与もあり得ず、「二〇一〇年には千億元(約一兆四千億円)規模」との試算もある3G市場は当然、幻のままだ。

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