アントニオ・ファツィオ伊中銀総裁がオランダ最大手銀ABNアムロによる伊準大手銀アントンベネタ買収計画を妨害した疑惑は、昨年末、同総裁が辞任し、後任に改革派のドラーギ元国庫省次官が就任する事態に発展。ファツィオ氏失脚で外資の買収を跳ね除ける「障壁」を失った伊金融界は「弱肉強食の論理」が支配する時代に突入した。「伊保険ウニポールによる伊大手銀BNLの防衛的買収計画の認可を否決」(一月十日)、「仏銀BNPパリバによる伊BNL買収計画が表面化」(二月三日)。 ドンを失った伊金融界は「開かれた市場」を懸命にアピールしているように見える。ABNアムロによるアントンベネタ買収に続き、伊銀第六位BNLも外資銀の手に落ちそうな雲行き。懸案だった伊中銀総裁の任期を終身制から六年に改める機構改革も目下、進行中だ。「欧州統合が深化する中、一国だけの保守主義は通用しない。イタリアには外資から見れば手頃な中小銀行が多い。大規模な再編は避けられない」。伊金融アナリストはこう予言する。 ただ外資に攻め込まれているばかりではない。金融改革は伊大手銀にとって外国市場に打って出る好機でもある。「イタリアの銀行が東欧を危機に陥れている」。ポーランドのマルチンキエビッチ首相は困惑を隠せない。伊銀第二位のウニクレディトが昨年、独銀第二位ヒポ・フェラインスを買収。ポーランドをはじめクロアチア、チェコなど東欧市場での影響力を一気に増したからだ。

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