“旧3社”の壁を取り払えるか、津賀社長の手腕が問われる (C)AFP=時事

「デジタル敗戦」で沈んだAV(映像・音響)大手メーカー3社の中で最も「回復」が早いとされるパナソニック。不採算事業や工場閉鎖などで遊休地化した資産の売却などを着々と進め、2013年第3四半期(4-12月期)には連結最終利益で過去最高益を更新した。同社関係者や一部マスコミには、陣頭指揮に立つ社長、津賀一宏(57)を10年前に同社をV字回復に導いた当時の社長(現相談役)の中村邦夫(74)になぞらえ、「改革型リーダー」と持ち上げる向きもある。ただ、津賀が進めている「選択と集中」には株主がクビを傾げたくなるようなケースもあり、数年来のグループ再編やM&A(合併・買収)で膨張した社内で社長の求心力が高まる気配もない。「中村改革」と称した10年前のリストラや薄型パネル事業推進の「一本足打法」が5年と持たなかったことを社員も株主も覚えており、そして疑っている。津賀が「第2の中村」ではないかと――。

「パナソニック8割増益」――。

 3月21日、日本経済新聞朝刊1面にこんな見出しが躍った。「パナソニックの業績が回復してきた……」という文章で始まるこの記事は、2014年3月期の同社の連結営業利益が前期比80%増の2900億円前後に達する見通しになったことを伝える、いわば日経の専売特許ともいえる「業績観測」。パナソニックの好調要因として、建材や配線器具などの住宅関連とカーナビゲーションや電装品といった自動車関連が好調なことに加え、数年来取り組んでいるコスト削減や円安が寄与することを挙げている。記事は前文の末尾を「デジタル家電の不振に直面するソニー、シャープを合わせた家電3社の中でいち早く回復基調が鮮明になる」と結んでいるが、果たしてそうか。業績の数字を撫でただけで、本来読者に伝えるべき「パナソニックの病巣」については何も触れていないのである。

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