“哀しき政策通”与謝野経財相の存在価値

執筆者:本田真澄2006年4月号

いまや財務省や日銀に最も頼りにされる政治家――。官僚に政策通とおだてられ、哀しからずや道を説く君。 通商産業相や自民党政調会長などを歴任し、永田町や霞が関では「政界で一、二を争う政策通」(経済産業省幹部)と評されながら、「インテリイメージが強過ぎる」(自民党関係者)弱みから落選も経験した与謝野馨金融・経済財政担当相。しかし、昨秋の解散・総選挙後に郵政民営化推進のため総務相に横滑りした竹中平蔵氏の後を襲って経済財政相に就任してからというもの、次第に発言力が増してきた。 与謝野氏の主張は常に正論。というよりもむしろ“鉄壁の筋論”。ライブドア事件や格差社会批判が噴き出たことで、期せずして与謝野氏の正論が注目されることになった。例えば、日銀によるジャブジャブの資金供給をテコに、株価や不動産など資産価格を上昇させて経済成長を加速させ、消費税の大幅引き上げなしに財政再建を行なおうという竹中総務相と中川秀直自民党政調会長の「上げ潮路線」。 この路線に対し、与謝野氏は会見やテレビ討論などで「調整インフレのような発想は不健全だ」と批判した。デフレ脱却後の日本経済のあり方にも「財政と金融政策がともに正常化しなければいけない」「心苦しくとも国民に負担をお願いするところは正直にお願いしなければならない」と論陣を張る。調整インフレの評価については議論が分かれるところだが、後段は不敗の論理である。

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