日本を母港とする米空母キティホークの艦載機部隊の陸上拠点の全面移転は「ありえない」との見方が出ている。神奈川県の厚木基地から山口県の岩国基地への移転が計画されているのは、キティホークの艦載機FA18戦闘攻撃機など五十七機。海上自衛隊のP3C哨戒機などは残るものの、移転が実現すれば、厚木基地周辺の騒音公害は激減すると見られていた。 だが、米軍筋によれば、「R116、R599と名付けられた米軍の訓練空域は相模灘沖と八丈島沖上空にある。厚木からは目と鼻の先だが、岩国からでは七百キロも遠くなる。移転後は岩国を離陸した戦闘機が厚木で燃料補給して訓練空域に向かうルートが想定される」。同筋は「厚木の滑走路を空母甲板に見立てるタッチ・アンド・ゴーまではやらないだろう」というが、訓練と騒音が続くとなれば地元のショックと反発は大きくなる。 厚木基地司令官のクーパー大佐は「岩国移転後も厚木の重要性は変わらない」とし、厚木の兵舎や格納庫、整備場について「十年は必要だ」との見方を示す。結局、米軍は空母艦載機が利用できる基地を厚木と岩国の二カ所に持つことになりそうだ。しかも岩国は米軍が空母の準母港化を検討している九州の佐世保基地に近く、佐世保と横須賀に空母が同時入港した場合、岩国と厚木がそろって受け皿となる可能性が高い。

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