粉雪を思わせる真っ白な表紙の本。読むと、その白さは恐ろしい「粉」を表現していることに気づく。 著者の安部司さんは、かつて「添加物の商人」として大活躍していた。大学を卒業して入った会社がたまたま添加物を売る商社だった。加工食品が増え、便利さ、手軽さが追求される時代背景も手伝って、トン単位で添加物を売る毎日だった。 売り上げを伸ばすおもしろさに夢中になっていたある日、三歳の長女がミートボールを食べるのを見て、一気に目が覚めたという。それは自分が開発した、三十種類の添加物とくず肉で作ったミートボールだった。翌日には会社を辞めた。 現在は、明治時代からの作り方を守る製塩会社に勤める。『食品の裏側』(東洋経済新報社)を読んで驚くのは、予想に反し、添加物の危険性、毒性を煽る語り口ではないことだ。時には保存性などの添加物の働きをメリットとしてきちんと説明している。「怖がらせるだけの内容では、『自分で考えて食品を選んだ方がいいですよ』という私のメッセージが伝わらないと思いました。怖い話ならいくらでも知っていますけどね」 これまで話題となった添加物についての本を、「革靴の上から孫の手で掻いているみたいな内容だよ」と笑う。現場ではもっと消費者の思いもよらない「加工」が展開されているらしい。

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