これまで「アフリカの部屋」を中心にアフリカに関する記事を執筆してきたが、今回は米国ワシントンDCで考えた東アジアにおける日米中3カ国のパワーバランスについて書くことをお許し願いたい。3月31日付で新聞社を退職し、これまで特派員として担当してきた米国の外交に関する取材を終えたのに伴い、ワシントンでの取材で垣間見た日本が直面する安全保障上の危機について、書き残しておきたいと考えた次第である。

 

 日本が直面する安全保障上の大きな脅威の1つが、急速に軍備を拡張する中国の存在であることに異論のある人は少ないだろう。覇権主義的傾向を強める中国の軍事力は、強大化の一途を辿っている。国際社会の大勢は、アジア発の深刻かつ現実的な脅威は「日本軍国主義の復活」などではなく「中国の軍事大国化」だと考えている。仮に日本の首相が靖国神社に参拝せず、尖閣諸島の領有権を「棚上げ」したとしても、中国の軍事的膨張は止まらない。日本が右傾化しようが左傾化しようが、中国の軍拡は当面続くだろう。中国の軍拡は「日本」という要素とは関係なく進行しているからである。

 

 日本政府が尖閣諸島を国有化して以降、中国政府は日本が領有権問題の存在を認め、尖閣諸島の帰属を「棚上げ」することを求めている。安倍晋三首相が昨年12月に靖国神社を参拝して以降は、首相が在任中に再び靖国神社を参拝しないと明言することを日中首脳会談の条件に挙げているという(毎日新聞4月3日朝刊)。

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