いかに悲願であるとはいえ、10年ぶりの政権奪回のためならここまでやるか――というのが正直な感想だ。

 経済の減速や汚職の蔓延、そして治安や社会正義への不安という現与党、国民会議派連合の失点に乗じ、7日から投票が始まったインド総選挙(5月16日一斉開票)を優位に戦っている最大野党、インド人民党(BJP)のマニフェストだ。

 BJPは同日発表したマニフェストの中に、現政権が2012年9月に決定した総合小売業(スーパー、百貨店などいわゆるマルチブランド業態)への外資参入を、一転「禁止する」と明記。同党による経済改革の加速に期待を示していたインド経済界は、一斉に困惑の声を上げている。

 インドの小売業界は 家族経営などの零細商店が全体の90%以上を占めるうえ、農産物の流通は古くからの既得権益を持つ仲買人などが仕切っており、今なお外資への小売市場開放には反対意見が根強い。BJPなど中央野党が政権を握っている州では、国の方針を無視して規制緩和を実施していない。

 同党が総選挙で勝つために外資フレンドリーな政策よりも国内の有権者を優先させるのは、内政としては理解できる。しかし、今年3月にはようやく総合小売業における外資第1号として、英テスコが大手財閥タタ・グループとの合弁でハイパー・マーケット・チェーンを展開することが決まったばかり。総選挙後に政権の座へ復帰することが濃厚なBJPが打ち出したマニフェストには、対外的にも大きなインパクトがある。

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