パレスチナ自治評議会選挙で圧勝したハマースに対して、二月二十一日にアッバース自治政府大統領から正式に組閣の要請がなされたが、調整は難航している。当面の組閣期限は三週間だったが、二週間延長され、三月二十八日をデッドラインとして交渉が行なわれている。百三十二議席中七十四議席を確保するという、ハマース自身にとってさえ予想外の全面勝利のため、権力配分の落ち着き先は定かでない。 ハマースの国際的地位をめぐる交渉にも進展は見られない。アメリカ、EU(欧州連合)、ロシア、国連のいわゆる「カルテット(四重奏)」がハマースに求めている「イスラエル国家の生存権の承認」「武力闘争の放棄」「過去の和平合意の受け入れ」といった条件は、ハマースにとって容易なものではないからだ。 ハマースの依拠する理念と原則は、一九八八年八月十八日に制定された綱領「ハマース憲章」に明文化されている。「アッラーこそ目的、預言者こそ模範、コーランが憲法であり、手段はジハード(聖戦)である。神の道のための死こそが至高の欲求である」(第八条)と謳い上げるこの憲章は、序文でエジプトのムスリム同胞団の創設者ハサン・バンナーの言を引き、「イスラエルの存在は、イスラームがこれを消滅させるまでしか続かない」とある。また「敵が根こそぎの敗北を蒙り、アッラーの勝利がもたらされるまで」戦うと宣言するなど、「イスラエル国家の生存権の承認」の否定は大前提である。

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