マレーシア航空のMH370便が地上から忽然と消え去ってから1カ月余り。日本人乗客ゼロだったこともあり、日本メディアの扱いは、どこか冷めていた。だが乗客乗員239人中153人が「自己人(なかま)」である中国籍だったこともあり、華字紙は強い関心をもって報じていた。タイの『世界日報』も例外ではない。同紙は事件発生から半月ほどの間に4本の社説を掲げているが、単なる人道的視点からの主張ではなかった。

 まず、事故から100時間ほどが過ぎた3月13日、「マレーシア航空機事故における国際的救援態勢に思う」と題する社説は、人道的立場、科学技術、即応態勢、動員力からいって救援態勢の主役は中米両国だとし、「中国海軍は事故発生2日後に遭難海域に綿陽艦を出動させた後、艦船を大量投入し、李克強首相はマレーシア政府に説明責任を果たすことを強硬に求め、国内の民意に応ずる姿勢をみせる」とした後、中国は「この事故を機に、『アジアの警察』を演じようとしているのか」と、中国海軍の行動を注視する。

 さらに2日後の15日には、「マレーシア航空機のナゾを解く。米中両国の科学技術、無言の闘い」とする社説で、この事故によって軍事科学技術面での米中対決が浮き彫りになったと説き、技術力、動員態勢、即応力などの全般的状況では米側が優れていることを認めている。だが、中国は、(1)政府系メディアを動員し、史上最大規模の支援態勢で救援に当たっていることを伝え、国内世論に対応すると同時に、「国威発揚」に努めている。(2)4個の衛星を使って探査を行っているが、じつは「この機会を利用して有事における衛星の運用を演習しているのだ。であればこそ軍事的意味は明白だろう」と、他国の航空機事故を奇貨とする中国の軍事的野心に注意を喚起した。

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