民主党の前原誠司代表が憐れむように「最近の総理には生気がない。九月までもたないんじゃないか」と口にしたのは、小泉純一郎首相が施政方針演説で明言した皇室典範改正案の今国会提出を断念した二月上旬のことだった。 連日の予算案審議ではライブドア事件など「四点セット」で野党に攻め立てられ、在任中の成立に並々ならぬ意欲を燃やしてきた改正案の与党内調整でも立ち往生。衆議院選挙で大勝して以来、順風満帆の政権運営を続けてきただけに、年明けの首相の苛立ちには相当なものがある。九月を待たずに早期退陣する可能性もあるのでは――四十三歳の若き民主党代表は自信に満ちていた。 あれから一カ月。永田町の風景はまるで鏡像のように反転した。「九月までもたないのでは……」と口さがなく噂される対象は、首相から前原氏に入れ替わった。辞任要求が地方組織にも広がり、前原氏は火消しのため、お詫び行脚に走り回らざるを得ないところまで追い詰められていた。首相には笑顔が戻り、前原氏の表情からは笑みが消えた。「一寸先は闇」といわれる政界でも、これほどの“どんでん返し”は珍しい。原因は言わずと知れた送金メール問題、首相にとっては棚ボタの、民主党の自滅だった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。