副大統領が狙った巨大なウズラ

執筆者:名越健郎2006年4月号

 1963年のケネディ米大統領暗殺事件で、UPI通信の至急報“Kennedy Shot”を「ケネディが撃った」と勘違いした外信部記者がいたという伝説があるが、チェイニー副大統領が2月にテキサス州南部で狩猟中、同行の弁護士、ハリー・ウィッティントン氏(78)を散弾銃で撃ったニュースの至急報も“Cheney Shot”だった。 副大統領がウズラを狙って引き金を引いた際、予告なしにその地点に踏み入った弁護士が被弾した不慮の事故とされ、地元警察は偶発事故として処理。共和党の熱烈な支持者であるウィッティントン氏も退院し、「副大統領にすまなく思う」との声明を出した。 ホワイトハウスはこれで一件落着と踏んでいるが、現職の副大統領が銃で人を撃ったのは、1804年にバー副大統領が政争のもつれからハミルトン元財務長官と決闘し、撃ち殺して以来2度目。黒幕的存在感や心臓病などの健康不安でイメージの悪いチェイニー副大統領の人気は地に堕ちた形だ。 全米ライフル協会(NRA)の20年前の銃擁護スローガン――。「銃は人を撃たない。人間が人を撃つ」 現在のスローガン――。「銃は人を撃たない。副大統領が人を撃つ」 チェイニー副大統領が同行の弁護士を撃った後、救急車が現場に駆け付けた。

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