イスラエル総選挙とパレスチナ新政権の発足。大きな政治の節目を経たそれぞれの現状は、前途の多難さばかりを見せつける。 三月二十八日に行なわれたイスラエル総選挙で、新党カディマを含めヨルダン川西岸の分離を公約に掲げた政党が全体で半数以上の議席を獲得した。変化の原動力となっているのは、占領も和平も行き詰まり、社会的格差も広がりつつあるという新たな現実だ。同時にパレスチナ自治政府ではハマスの単独政権が正式に発足した。イスラム原理主義を掲げるハマスは、イスラエルの存在を容認しないなど強硬な基本原則を堅持しているが、給与支払いなど厳しい現実への対応に苦慮している。イスラエル、パレスチナ双方は今後しばらく、互いに背を向けた状態を続けるだろう。だが、両者の関係は簡単に分離できるほど単純ではない。予想外の政党が躍進 新党カディマが掲げる分離構想は(1)イスラエルは西岸のパレスチナ人人口密集地帯から撤退し入植地も撤去、(2)前述の地帯以外の主な入植地群はイスラエルに併合、(3)「安全フェンス(隔離壁)」を早期に完成、(4)恒久的な国境を画定、(5)パレスチナ側は独立、などを骨子としている。和平交渉に基づく分離を前提としているが、交渉が不可能な場合には一方的にでも実行するとしており、実際、交渉にほとんど期待を寄せていない。西岸分離構想は昨年実行されたガザ地区からの撤退という占領地切り離し策の延長線上にあり、左派系の労働党も「メレッツ」も同様な政策を掲げている。

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