長年におよぶ日本とインドネシアの経済的な蜜月関係に暗雲が垂れ込めている。日本政府による二〇〇五年度の対インドネシア新規円借款の目玉だったジャカルタのMRT(大量高速公共交通システム)建設事業への融資が、年度末の三月下旬になって見送りとなったからだ。 インドネシア初となるMRTは、首都ジャカルタを地下鉄と高架鉄道で縦断。事業費は約七億七千万ドルで、二〇一三年の完成を目指す予定だった。 しかし、融資交渉が九分九厘まとまった土壇場で、ユスフ・カラ副大統領が、日本企業が事業を請け負う「タイド(ひも付き)ローン」ではなく、インドネシア企業の参入に道を開く「アンタイドローン」にすべきだと強硬に主張。日本は、「MRT事業には地下鉄工事などの専門技術のある日本企業の参加が必要」と反論、交渉は決裂した。 日本の政府開発援助(ODA)の最大の受け手であるインドネシアは巨額の対外債務を抱えており、借款受け入れの見直しを迫られているのは事実。しかし今回、「アンタイド」を主張したカラ氏の思惑は「全く別にある」という。ブカカ財閥を率いるカラ氏は、その傘下企業を地下鉄事業にねじ込むため、ひも付きを拒否したというのだ。

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