「尖閣」意識した「中露合同演習」の可能性

執筆者:名越健郎2014年4月29日

 中国とロシアの今年の海軍合同軍事演習が5月末から東シナ海で行われる見通しで、尖閣諸島制圧を念頭に置いた演習になる可能性が出てきた。

 2月末に北京で開かれた中露両軍の準備会議で演習実施が決まった。ウクライナ危機で関係を強化する中露が日本に圧力をかける図式となりそうだ。

 演習は「海洋協同2014」。ロシア太平洋艦隊幹部によれば、今回は5月末から6月初めまで、「東シナ海北部」の海上と上空で実施するという。尖閣は東シナ海南部に位置するが、尖閣を意識した演習になろう。

 演習には、ロシア太平洋艦隊と中国海軍の艦船や航空機・ヘリが参加。実射訓練も行われる。両国は近く再度会議を開き、演習内容を詰めるという。

 両国は交互に演習を主催しており、今回は中国側で実施される。中国は東シナ海で実施することで、沖縄県・尖閣諸島を「日米安全保障条約の適用対象」と日米共同声明に明記した米国をけん制し、日米に対抗するのが目的だろう。尖閣問題で中立姿勢を取るロシアを中国支持に傾斜させる狙いもありそうだ。

 ロシアは日中の係争問題に関与したくない立場だが、ウクライナ問題で孤立が進む中、数少ない友好国の中国の要求は断れないとみられる。

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