中国の新疆ウイグル自治区のウルムチ南駅で起きた爆発事件のニュースをテレビで見ていたら、今年初めの旧正月前に北京に行ったとき、ある有名大学で宗教学を教える大学教授が「このままでは、『維族蜂起』が起きてしまう」と語った危機感あふれる言葉を思い出した。

 主に新疆ウイグル自治区に暮らすおよそ1000万人のウイグル族は中国語で「維吾爾族」、あるいは省略して「維族」と呼ばれる。清朝末期、中国各地にいるムスリムの別の異民族「回族」が起こした大規模反乱を「回族蜂起」と呼ぶのだが、教授は「回族蜂起」に例えてウイグル族をめぐる現状を深く懸念していた。

 習近平国家主席が視察に訪れた直後に公共交通機関を狙ってテロを仕掛けた今回の事件は、天安門広場に車が突っ込んだ事件も併せて考えると、ウイグル族の一部グループが、共産党政権の言うように中国からの分離独立を目指しているのかは別にして、命を賭ける「聖戦」の覚悟を決めた可能性をどうしても想像させてしまう。

 ウルムチ南駅の爆発事件を受け、習近平は「のさばるテロ分子をたたきのめすべきだ」という強烈な言葉で重要指示を発した。今回の一撃は共産党政権にとっても「紅線(レッドライン)」を完全に超えた感がある。これから共産党政権とウイグル族の反体制派との戦いは長く凄惨なものになるだろう。

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