中国の主要都市で吹き荒れた「反日デモ」から一年。北京や上海では「暴動」と化していたが、自らに怒りの刃が向かうのを恐れた中国政府の一連の抑制策が効き、「一周年デモ」が発生する気配は感じられない。反日デモ直後は「怖くて夜、街を一人で歩けない」と真顔で話す日本人駐在員もいたが、今では派手な日本語のネオンサインを掲げる店は大繁盛だ。 中国側も「友好ムード」の醸成に躍起だ。日本の世論の反発を招いたものの、橋本龍太郎元首相を団長とする日本の対中友好七団体との会談に胡錦濤国家主席が登場したほか、中国各地で官製の日中友好イベントが目白押し。日本企業の投資や技術が今後も不可欠という現実を、中国側も認識している。「反日デモ直後に落ち込んだ中国ビジネスの拡大意欲が回復」。日本貿易振興機構(JETRO)は三月中旬、日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査を公表した。中国での既存事業の拡大や新規事業を検討している日本企業の比率は、デモ直後の五三・五%から七五・三%に上昇した。「一年前とは雰囲気が明らかに違う」(上海の日系企業首脳)のは間違いないようだ。 だが、地元マスコミによる「日本企業叩き」とみられる報道は後を絶たない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。