文化大革命の「輸出」とカンボジア

執筆者:野嶋剛2014年5月14日

 カンボジア出身のドキュメタリー監督、リティ・パニュの「消えた画 クメール・ルージュの真実」を試写会で見た。

 リティ・パニュは1970年代にポル・ポト政権下のカンボジアで少年時代を過ごし、クメール・ルージュ、つまりポル・ポト政権の農村のキャンプに強制移転させられ、家族のほとんどを失った経験を持つ。キャンプを命からがら抜け出し、フランスで映画の道に入り、カンボジアの苦難の歴史に関する多くの作品を発表して国際的に高い評価を受けている。

 クメール・ルージュが支配した「民主カンプチア」時代は、1975年から1979年まで続いた。わずか4年あまりの時間だったが、人類史にも例を見ない大量虐殺や大量洗脳が行われたことは誰もが知っている。だが、当時の状況についての映像や写真は不足しているという。

 本作は、そのリティ・パニュ監督が、手製の100体以上の泥人形を駆使し、記録映像も組み合わせて当時の状況の再現を試みたものだ。表情のない人形によって、かえって当時の非人間的な状況が浮かび上がる。古典的名作「キリング・フィールド」とはひと味違った、カンボジア人の視点からの作品となっている。

 作品の本題からやや外れるが、映画のなかで、2人の中国共産党の指導者がカンボジアを訪問し、ポル・ポトらと会談し、クメール・ルージュの「功績」を賞賛している貴重な映像が流されていたところに興味を引かれた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。