北朝鮮に溜まる「革命のマグマ」

執筆者:スタニスラフ・ワリボダ2006年6月号

民衆の間に、軍内に、高まる一方の不満。その目で見た北朝鮮の“断末魔のあがき”を、気鋭のロシア人記者がレポートする。[モスクワ発]北朝鮮ほど記者活動が厄介な国はない。朝鮮中央通信の報道はプロパガンダ(宣伝)ばかりでうんざりするし、常に誰かに監視されているような不愉快な感覚がある。わたしはしばしば「猿の惑星」にいる錯覚を覚えた。市民は好奇心で外国人を見つめるものの、常に距離を置き、勇気のある子供たちが「ハロー」と言ってくる程度だ。閉鎖的、統制的な北朝鮮社会で、興味深く新しい情報を得るのは本当に難しい。 しかし、困難であっても不可能ではない。その最低限の条件は、酒を飲むことだ。ただ飲むだけでなく、痛飲することだ。北朝鮮の人々の考え方や本音を引き出すには、食事をご馳走し、地元の強い酒やウオツカを注ぐことが最も効果的であることを経験則から悟った。酒が社会の潤滑油という点で、ロシアと北朝鮮社会はよく似ている。 レストランで差し向かいに座り、ウオツカも二杯目くらいになると、堅い当局者も公式表現を忘れ、言ってはならない独自の意見を話し始める。ここで重要なのは、酔ったふりをしながら相手の話を記憶することだ。こうした場で、指導者や政権、生活への本音から町の噂まで聞き出すことができる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。