談合列島分裂(上)大手ゼネコンのいらだち

執筆者:吉野源太郎2006年6月号

独禁法改正をきっかけに建設業界を襲った未曾有の激震。それは政治から社会まで、日本の土台そのものを揺さぶり始めた。「少なくとも大成さんとだけは、もう誰も共同受注をしようとはしないでしょう。リーダーになるスーパーゼネコンが一社でも抜ければ今後、談合は決して成立しませんよ」 中堅建設業幹部は複雑な表情でこう語った。“事件”が起きたのは国が発注した北海道の夕張シューパロダム本体一期工事。大成建設は今年三月、これを四六・六%という常識はずれの低い落札率で獲得したのだ。 狙いは二期工事以降の継続受注。いわば「土建版一円入札」だったのだが、落札率の低さ以上に業界が驚いたのは、落札者が大成だったことだ。この工事については業界に、「落札は鹿島建設」という暗黙の“事前了解”があったからだという。しかも大成は昨年まで談合の有力な仕切り役の一社と言われていた企業だった。 談合の要諦は、業界や発注者の間の暗黙のルールを入札参加者に守らせることだ。落札率とは、政府や自治体などの発注者が見積もった予定価格に対する落札価格の比率のことだが、その数字は談合が成立してから、発注者から入手した情報に基づいて、相応な利益が取れる数字に決めればいい。何より大切なのは決してルール破りのないことなのだ。

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