ロシアのプーチン大統領はクリミア併合後のロシア像について、相当長期に亘る転換期を想定しているとみるべきだ。4月下旬にメドヴェージェフ首相は議会で「輸入依存を脱し、国内のインフラ建設と製造業向け投資を重視する」という方針を明らかにした。プーチンは首相時代の2009年に「食糧の40%以上、そして医療品の50%以上を輸入に依存していることはロシアの恥だ」と述べたことがある。ロシアに対する経済制裁強化は不可避という情勢のなかで、むしろこれを奇貨として中期的な経済復興路線構築の機会としたい、という願望もまた広がり出したことが、われわれのロシア分析にとって新しい。

 

モスクワ改革派の示唆

 4月下旬にモスクワの改革派の研究所INSOR所長のイーゴリ・ユルゲンスにワシントンで会った。国際会議に出席したユルゲンスはウクライナ問題への質問は封じ込んだものの、「プーチンに影響力を持つのはヘンリー・キッシンジャーと習近平総書記の2人だ。それ以外にプーチンが耳を傾ける人物は思い至らない」と私に話した。このことはプーチンの世界理解を思考の対象とするうえで、極めて興味深い示唆だ。私はユルゲンスの解釈の背景を知りたかったが、周辺には多くの参加者が螺集しており、彼とプーチン大統領との距離感に微妙なものが残っているのも明らかなため、それ以上のことを聞くのは諦めた。代わりにモスクワでの面談可能性を聞いた。5月は海外出張が入っているが、6月と7月はモスクワに張りついており、8月は休暇をとるとのことだった。「休暇はクリミアか」と聞くと「いやクリミア以外だ」と彼は答え、輪の一団は微苦笑となった。

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