米中央情報局(CIA)工作員は辞任した後も当然、守秘義務がつきまとう。だから、退職後も食えるよう仕事の面倒をCIAがみてくれる。「口止め料ですよ」と日本語に堪能な元工作員が教えてくれたことがある。 長官クラスなら、辞めてからも講演にコンサルタント業にと引っ張りだこだ。このほど突然辞任したゴス前長官もよほどのスキャンダルがない限りそんな恩恵に浴するだろう。 他方、CIAに面倒をみてもらわなくても、自分が開拓したコネを生かして自前でビジネスを切り開く、たくましい元要員もいる。在日米軍再編問題で交渉を妥結させたリチャード・ローレス国防副次官がそうだ。 ローレス氏は一九七二年から八七年まで工作部門のキャリア要員で、東アジア中心に活躍した。東京駐在の経験もあり、日本の警察や公安に知己が多い。しかし、上司と衝突して十五年でCIAを辞めたといわれる。 辞任した年、ワシントンで「USアジア商業開発コーポレーション」というコンサルタント会社を立ち上げた。 ローレス氏の強みはブッシュ大統領の実弟でフロリダ州知事のジェブ・ブッシュ氏との親しい関係だ。フロリダ紙セントピーターズバーグ・タイムズによると、ローレス氏は、当時同州の商務長官だったブッシュ知事から八七年、十六万ドルの契約料でフロリダ産品の対アジア輸出促進の業務を請け負った。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。