「寝た子を起こしてしまった」

 与党議員たちは、いら立っている。5月21日、福井地裁が出した、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じる判決のことだ。

 国民世論の中では今なお脱原発を求める声は根強いが、脱原発運動そのものに一時の勢いはない。毎週金曜日夜に首相官邸前で行われているデモも、人数は激減し「常連」たちだけが声を上げているというのが現状だ。

 しかし福井地裁の判決は、脱原発運動を再び盛り上げるきっかけになる。再稼働に向けて進む安倍政権にとっては誤算だ。ましてや今年は原発が争点となる知事選が待ち構えている。大飯原発のある福井に隣接する滋賀と、福島だ。この2つの知事選に「重大な影響が出るかもしれない」という危機感が、政権中枢に広がっている。

 

しぼみつつある「自民の楽観論」

 滋賀県知事選は7月13日に行われる。「卒原発」を掲げる嘉田由紀子知事が引退。後継指名した前民主党議員の三日月大造氏と、自民、公明両党などが推す元経産官僚の小鑓隆史氏、共産党推薦の坪田五久男氏らが出馬する。

 嘉田氏は2012年の衆院選では小沢一郎・現生活の党代表に口説かれて日本未来の党を結党し、全国を飛び回ったが惨敗。以後、中央政界から遠ざかり知事業に専念して来たが、今も脱原発の旗手の1人ではある。嘉田氏によると、三日月氏は「原発に隣接する自治体にも立地自治体並みの権限を与える」ことを知事選マニフェストに盛り込む方向で調整しているという。原発事故により250キロ圏まで被害が及ぶ可能性を指摘した判決は、三日月氏のマニフェストに説得力を持たせることになった。

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