韓国「無敵のサムスン」の深刻なつまずき

執筆者:草壁五郎2006年6月号

半導体などで圧倒的なシェアを握り、いまや世界トップ企業となったサムスン。だが、捜査の手は迫り、反感も沸騰しつつある。[ソウル発]五月三十一日、韓国では統一地方選挙が実施される。 京畿道知事選に与党ウリ党から陳大済前情報通信相が、済州道知事選には野党ハンナラ党の玄明官氏が、それぞれ出馬する。ふたりともサムスングループの幹部を経験した人物だ。陳氏はサムスン電子デジタルメディアネットワーク総括社長を、玄氏もサムスン物産会長を務めた。 これまで選挙の洗礼を受けて政治家となったサムスンマンはほとんどいない。現在の選挙情勢では両氏とも苦戦を強いられているが、特に興味深いのは与野党の区別なく政界入りを目指していることだ。韓国の優秀な人材をかき集めてきたサムスンが、ついに政界にまで影響力を拡大し始めたともいえる。社会に広がる「反サムスン感情」 すでに韓国は「サムスンなしでは成立しない」といえるほど依存度を高めている。政治、経済、社会、文化など各界で影響力が拡大し、韓国はあたかも「サムスン共和国」になりつつあるという指摘すら出ている。 その後ろ盾となっているのは、圧倒的な経済力だ。二〇〇四年の数字で見ても、上場会社十四社を含む六十二社で構成されるサムスングループの売上高は約百三十六兆ウォン(約十六兆円)で、韓国の国内総生産(GDP)の一七%に達している。これは同年のマレーシアのGDPに匹敵する規模だ。輸出総額は韓国の総輸出の二割を超え、上場企業全体の株式時価総額に占める割合もやはり二割を超える。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。