大型連休の始まりに、ジョン・ケネス・ガルブレイスの訃報に接した。享年九十七。ハーバード大名誉教授、リベラル(進歩派)経済学者の泰斗だった。日本語になった著作も多く、新聞は一面でその死を報じた。 そのガルブレイスの親友の一人が、保守論壇の重鎮ウィリアム・F・バックリー・ジュニア(八〇)だったことは、日本ではあまり知られていない。片や、教え子ケネディ大統領をはじめ歴代民主党政権のアドバイザー、もう一方はニクソン、レーガン両共和党大統領の友人にして指南役。バックリーは、ガルブレイス流のケインズ派経済学こそ、アメリカの自由主義の敵だと断罪してきた。日本なら「犬猿の仲」だろう。 それが、一九六六年、ニューヨークのホテルのエレベーター内で出会って、ふと言葉を交わして以来、意気投合した。ともに趣味のスキーでスイスに毎年出掛け、一緒に滑ってアフタースキーも楽しむ仲になった。 スキー行を一緒にするようになって間もない頃、難スロープを颯爽と滑り降りたバックリーが、かなり遅れて降りてきたガルブレイスに尋ねた。「スキー歴はどのくらい?」「かれこれ三十年かな」「なるほど、経済学研究歴と同じくらいというわけか。道理で」

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。