中東から二枚看板が消えて

執筆者:名越健郎2006年6月号

 中東和平交渉のプレーヤーがすっかり一新された。強烈な個性を持った故アラファト・パレスチナ自治政府前議長、シャロン・イスラエル前首相が“退場”。1月のパレスチナ議会選では、イスラム原理主義組織ハマスが圧勝し、サッカー選手だったハマスのハニヤ氏が首相に就任。3月のイスラエル総選挙では、脳出血で倒れたシャロン氏が創設した中道政党・カディマが辛うじて第一党となり、党首のオルメルト氏が連立政権の首相に就任した。ハニヤ、オルメルト両氏は地味な参謀タイプで、指導力は未知数。暴力路線を維持し、イスラエルの存在自体を否定するハマスの登場で、中東和平交渉も当分停頓しそうだ。 ラビン元イスラエル首相とアラファト前議長があの世で議論した。 アラファト「やはりわたしでないと、パレスチナのテロの動きは止められない」 ラビン「あなたは自分の唇の動きも止められなかった」 ヨルダン川西岸に入植したイスラエル人が入植地を「神から授けられた地」として撤退を拒否し、その模様が米国のテレビで放映された。キャスターがコメントした。「共和党がホワイトハウスを去らないのと同じ理由です」 ブッシュ米大統領が中東問題で演説した。「中東和平を前進させるには、イスラエル人とパレスチナ人がクリスチャンのように行動すべきだ」

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